Q&A

2025.12.16

【Q&A】012 ネガティブコメントへの対応

Q

病院に対するネガティブなコメント(口コミ)にどのように対処したらよいですか。

 

 

 

 

A

病院に対するインターネット上のネガティブな口コミ(コメント)への対応は、悩ましい問題です。患者さんの主観的な感想もあれば、時に事実無根の誹謗中傷もあり、対応を誤るとかえって事態が悪化(炎上)することさえあります。

今回はコスト、効果、リスクにスポットを当てて具体的な対処方法について説明します。

 

1.【プランA】院内での対応

まずは、そのコメントが「単なる不満・感想」なのか、「事実無根の誹謗中傷・プライバシー侵害」なのかを院内にて冷静に分析します。そして院内スタッフにてそのコメントに対して返信の対応をすることです。

  • 効果(メリット): 「待ち時間が長い」「受付の態度が冷たかった」といった主観的な不満に対しては、真摯に謝罪や改善策を(公開の場で)返信することで、他の閲覧者に対して「誠実なクリニックだ」という良い印象を与えられます。事実無根の誹謗中傷等についても、上手に返信することで風評被害を回避することも可能ですし、さらなる誹謗中傷を抑止する余地も生まれます。これが最もコストが低い方法です。
  • リスク(注意点): 患者さんの情報を漏らすことです。 たとえ事実であっても、患者さんとの間で診療に関する情報のやり取りを公にすると、守秘義務違反(個人情報保護法違反)に問われるリスクがあります。 反論する際は、患者情報を一切含まない一般的な内容に留める必要があります。また上手に返信することができない場合はさらに誹謗中傷などのコメントが寄せられ、かえって事態が悪化するリスクもあります。

 

2.【プランB】サイト運営者への削除請求(任意交渉)

コメントが明らかに事実無根であったり、医師やスタッフ個人への人格攻撃、患者さんのプライバシー侵害にあたる場合で、放置することができず、院内スタッフによる対応も人的資源や能力などの点で課題がある場合は口コミサイトやGoogleマップの運営者に対し、「ガイドライン違反」または「権利侵害(名誉毀損など)」を理由に削除を求めることができます。

  • 効果(メリット): 成功すれば、問題の投稿自体が削除されるため、根本的な解決になります。
  • コストと注意点: ご自身でも請求可能ですが、法的な主張(どの部分が名誉毀 損にあたるか等)を的確に行わなければ、運営者は「表現の自由」を優先し、応じないケースが多々あります。弁護士を通じて法的な意見書を作成・送付する場合は削除の成功率が格段に上がりますが、弁護士費用が発生します。また特定のコメントの削除に成功しても、悪意ある人が繰り返して同種の違法行為を行う場合は都度対応する必要が生じます。

 

3.【プランC】法的手続(発信者情報開示・損害賠償)

運営者が削除に応じない、または投稿者が特定のアカウントで執拗に誹謗中傷を繰り返すような悪質なケースでは、法的な手続(裁判)に移ります。

  • 効果(メリット): 裁判所を通じて投稿者を特定し、損害賠償請求や、今後の投稿を差し止めることが可能になります。最も強力な対抗手段です。
  • コストと注意点: 発信者の特定には裁判手続が必須であり、時間と弁護士費用が最もかかります。費用対効果を見極める専門的な判断が必要です。

 

3つのプランのうちどのプランが良いかはネガティブなコメントの具体的内容や頻度、病院の規模や人的資源、対応予算の程度、経営方針などにも左右されるので一概にどれが良いとも言えません。

 

 

私たち弁護士法人海星事務所は、医療分野、介護分野の関与先を多く持ち、数多くのクリニック・医療法人様の風評被害対策(口コミ対応)や、院内体制の整備をサポートしてまいりました。現在、お困りのコメント、口コミを前提に、どのタイミングでどの打ち手を実施したらよいか、実際のコストや想定される効果、見通しなどについて、助言や支援を惜しみません。

ぜひ一度ご相談ください。